想像してみてください。真っ暗な部屋の壁に、突然外の世界が映し出されるのを。しかも、その世界は完全に上下逆さまで、まるで異次元の窓を覗いているかのような不思議な光景です。これこそが、カメラ・オブスクラ(Camera Obscura)の魅力的な現象なのです。
ラテン語で「暗い部屋」を意味するこの言葉は、単なる光学現象を超えて、人類の視覚に対する探求心と創造性を物語る、深い歴史を秘めています。
カメラ・オブスクラの仕組みは、驚くほどシンプルです。暗い空間に開けられた小さな穴(ピンホール)を通って入る光は、直進するという物理法則に従って進みます。外の世界から発せられた光の束は、この小さな穴を通過する際に交差し、反対側の壁に像を結ぶのです。
この現象の美しさは、その単純さにあります。レンズも鏡も電気も必要ありません。必要なのは、光と闇、そして小さな穴だけ。まさに自然の法則が生み出す、純粋な魔法と言えるでしょう。
この現象の記録は、驚くべきことに紀元前5世紀の中国にまで遡ります。哲学者・墨子が既にこの光の性質について記述していたのです。その後、11世紀のイスラム世界では、学者イブン・アル=ハイサム(アルハーゼン)が詳細な観察を行い、現代の光学理論の基礎を築きました。
ヨーロッパでは13世紀以降、この現象が学者たちの間で知られるようになり、16〜17世紀には科学と芸術の境界を越えて活用されるようになります。この時代の人々にとって、カメラ・オブスクラは単なる道具ではなく、世界を理解するための新しい窓だったのです。

小型カメラオブスクラの制作。このカメラオブスクラは、広島市立基町小学校の児童たちに、被爆80周年記念事業で使ってもらいます。レンズは100円ショップの虫眼鏡を利用。レンズとスクリーンの距離を手動で調整することができるようになっており、写像の奥行きに対してフォーカスする距離(ピントがあう被写体)を調整することができるようになっている。(レンズは光を集めて熱を発生させたり、覗き込むと目を痛めることがあるため、扱いには注意が必要です。)

小型カメラオブスクラで、ピースウイング広島覗いたところ。周りが明るいので、ちょっと暗いですが、スタジアムの様子が、上下逆さまになって手の中のスクリーンに写っている様子が見えます。撮影をしていないので、当然ながら、スクリーンの写像は対象物と連動して動きます。当然のことなのですが、なぜかささやかな驚きを感じる瞬間です。
現在、大きなカメラオブスクラも制作しています。おおよそ大人の身長と同じくらいの高さがあります。大きなカメラオブスクラには大きなレンズが必要です。今回、広島大学宇宙科学センターの川端弘治先生のご協力を得て、大きなレンズをお借りすることができました。

角材を組み立ててカメラオブスクラの外形を作り、暗幕で内部空間を暗くする計画です。
完成した大きなカメラオブスクラは、2025年7月19日(土)12:00から始まる、「基町写真展2025」の会場(ひろしまスタジアムパーク HiroPa PARK STDUIO2)で、無料体験できます。スマホで記念撮影してみませんか。
詳しくは、以下をご覧ください。