2月8日に、シンポジウム「創造する基町」を開催いたしました。
来場者の方々には、厚くお礼申し上げます。
シンポジウム来場者からいただいた事前質問に答える時間がありませんでしたので、司会者・中村の回答を述べさせていただきます。
Q1.市立図書館展示コーナーのシールでは、保存より再開発が多く支持されていましたが、今の建築群を残しつつ再開発を進めることは可能でしょうか?時代の変化や場所から、都市機能は高度化すべき地区と思いますが、価値ある建築がなくなるのは忍びないです。
A1. シンポジウムでの発表を聞く限り、技術的には十分可能だと感じました。これまでも複数の専門家から、鉄骨建築は適切なメンテナンスを行えば長期間使用可能だという意見が示されています。基町住宅地区は1つの街区として計画されており、その中で全てを現状維持するのが最善とは限りません。むしろ、設計時点から変化に対応できる柔軟性を持たせている設計思想が伺えます。たとえば広島平和記念資料館でさえ、当初のルーバーが取り外されるなど、合理的な変更を受け入れてきた経緯があります。基町高層アパートについても、必要な改修や再編成を行うことで、新たな価値を加えつつ継続利用することが十分に可能だと思います。ただし、それを実現するためには、創意工夫が不可欠であり、歴史的価値と現代の都市機能のバランスを慎重に考える必要があります。(中村)
Q2.「広島のメッセージ発信地にしていくことを目指しています。」とありますが、80年前に陸軍病院でほとんどの方が命を失った場所にサッカースタジアムが存在する現実をどう受けとめたらよいのでしょうか。ピースウイングをも「広島のメッセージ発信地」に絡めていくには???
A2. サッカースタジアムに多くの人が訪れる中で、平和を願う想いが自然と心に届く場になることを願っています。試合やイベントの際には、楽しい時間を過ごしていただくことがもちろん大切ですが、スタジアムの名称である「ピースウイング」には、訪れた人が広島の歴史や平和への想いを少しでも感じるきっかけが含まれていると思います。すべての来場者が歴史を深く考えるわけではないかもしれませんが、その中の一部の方でも、この地域の歴史や基町アパートの建築に関心を持ち、新しい視点でその価値を再発見していただけることが、広島からのメッセージ発信の一端になると考えます。(中村)
Q3.広島城へのデザイン上の配慮や敷地内の櫓跡の事など大事にするにはどうすれば良いですが。勝手な自分の推測の部分が多く、文献調査などでの確認はしていません。平和の池など平和公園の軸線を意識したデザインを目立たせたい。枯山水でも良いけど可能なら水を張っていただきたい。
A3. 非専門家の立場から想像する限り、地域性や歴史の特異性を持つこのエリアでは、一般的な解決策がそのまま当てはまることは難しいかもしれません。このような場合、長く残る価値のあるものを作るには、専門家の意見と市民の意見を丁寧に取り入れながら、時間をかけて合意形成を進めることが必要だと思います。広島城や平和公園の軸線を含む全体的なデザインを調和させるためには、文化や歴史を踏まえた多面的なアプローチが重要です。例えば歴史を象徴する景観の工夫は、ただの装飾ではなく、地域のアイデンティティを再認識させ育てる役割を果たせる可能性があります。市民と専門家の協力により、この場所を次世代へ残していく意識が高まることが大切だと考えます。(中村)
ご質問いただきまして、誠にありがとうございました。
お礼申し上げます。